「愛とは、情と言うよりも欲の類だよ。それが高じれば、独占欲・支配欲というやつになる」
先日読んだシンプルな「女か虎か」とは別の本。状況が複雑に設定されてる「異版 女か虎か」を読みました。シンプル版も異版も、どちらもおもしろいです。上記引用のセリフは、異版に掲載されてるもの。他の女性にとられるくらいなら、虎に殺されてしまえと思う心理、裏切りの可能性を示唆してる一文です。現実的に考えると、独占欲や支配欲を「愛」と勘違いしてることもありそうですよね。
シンプル版も異版も、大筋は同じで、王女様と恋仲になった廷臣が「女か虎か」の刑で公開処刑される物語。二つの扉を選ぶ廷臣。一つは美女がいて結婚。一つは虎がいて食べられる。王女はその答えを知っていて、廷臣にどちらかを選ぶように合図する。王女はどちらの扉を教えてくれたのか、廷臣にとって生か死かの究極の二択。結末は書かれておらず、謎（リドル）のまま終わるお話です。
異版では、王様、王妃、王女、侍女、廷臣がそれぞれ複雑な状況に置かれてますね。王女と侍女、二股かけた廷臣。侍女と入れ替わって、廷臣と結婚しようとする王女。王女と入れ替わって、廷臣に送る合図を躊躇する侍女。両方に虎を入れて、廷臣を消そうとする王様。王女を他国の王子と結婚させて、廷臣との恋を諦めさせようとする王妃。
――貴賓席の女は、王女サロメなのか、侍女ミリアムなのか？眼の合図は、「開けろ」の指示なのか、「開けるな」の指示なのか？彼女たちは、自分をまだ愛しているのか、愛していないのか？
そして、これから開けようと手をかけた箱の扉から出てくるのは――
――女か虎か……。
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シンプル版は廷臣だけの葛藤。異版は、それぞれが究極の二択で大渋滞。どちらを選んでも愛する人を失うことになる侍女、目くばせで行った合図はどちらが虎なのか。王女が入れ替わったことを知った王様、2つの部屋に虎を入れたのか。侍女からの合図に困惑する廷臣、微妙な合図をどう判断したのか。「かまいたちの夜」みたいに、マルチエンディングで全部のパターンで結末が読みたいです☆
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山口雅也
