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「走れメロス」になれなかった太宰治さん、熱海に友人を置き去り?

 

太宰治さんの実話で走れメロスの裏話、伊沢拓司さんがご紹介のエピソードがおもしろかったです。旅先でお金がなくなった太宰治さん。お金を借りてくるといって帰ってこない。旅館で一人待つ友人の檀一雄さん。何日経っても戻らないので、太宰さんを探しに東京へ戻ると、井伏鱒二さんと将棋をしてたという実話。

 

「この、人質を置いて約束を果たそうとする太宰の行動が、走れメロスの着想になったんじゃないかなと言われていたりもするんですね。もっとも、結末は全然別だったわけですけどね」

 

2020年11月9日、グッとラックさんの「グッと身につく教養」がおもしろかったです。このときのことが壇さんのご著書に書かれてると知って、お取り寄せしました。熱海の思い出、さんの心境が興味深い。走れメロスを読むたび思い出されてたそうですね。

 

 

私は後日「走れメロス」という太宰の傑れた作品を読んで、おそらく私達の熱海行が、少なくともその重要な心情に発端になっていはしないかと考えた。

 

あれを読むたびに、文学に携わるはしくれの身の幸福を思うわけである。憤怒も、悔恨も、汚辱も清められ、軟らかい香気がふわりと私の醜い心の周辺を被覆するならわしだ。

 

「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」

と、太宰の声が、低く私の耳にいつまでも響いてくる。

 

 小説 太宰治 (岩波現代文庫)

 

 

 さんへの罪悪感、後ろめたさを物語にしたのが「走れメロス」という説。メロスにはなれなかった太宰さん。後悔と自戒、心苦しさがあったからお話の中のメロスは帰ってきたのかも。

 

さんからすると、あのときの気持ち、待ちぼうけの時間が作品に活かされていて欲しいですよね。名作の中で、自分への謝罪の気持ちが代弁されてるとしたら、同じ作家として嬉しいことなのだと思いました(^-^)

 

走れメロスの執筆にこんな事情があったなんて、とても興味深いです。次に読んだら印象が違ってそうで楽しみです。人間の弱さ、こうであって欲しいという願望、太宰さんの人間味、作品の深みになりますよね。

 

 

小説 太宰治 / 檀 一雄