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「金のガチョウ」に頼らないで王様になった少年 / 絵本 金のガチョウ

 

金の卵を産むガチョウのお話と勘違いした絵本。タイトルがちょっと紛らわしい。こちらは、黄金のガチョウを連れて歩く「すえむすこ」のお話。最終的にお姫様と結婚して王様になるというハッピーエンド。

 

 

 金のガチョウ (グリム絵本)

原作: グリム(the Brothers Grimm)
文・絵:バーナデットワッツ(Bernadette Watts)
訳:福本友美子

 


森の中で腹ペコな小人のおじさんと出会った「すえむすこ(三男)」。食べ物と水を分けてあげる。親切のお礼にと、小さなおじさんは「すえむすこ」に黄金の羽が生えたガチョウをプレゼント。


興味深いのは、このお話の中で「金のガチョウ」が直接金銭的な価値を発揮しないこと。宝物扱いされるのは、宿屋に泊まったとき、羽を盗もうとした娘さんたちの手がくっついて離れなくなるくらいでしょうか。


すえむすこは、ガチョウから手が離れなくなった娘さんたちをそのまま気にせず連れ歩く。それを止めようとした牧師さん。教会で働く男。みんな手が離れなくなる。ずらずらずらずら行列になって連れ歩く。


その光景を、笑わなくなった国のお姫様が見て大爆笑。それがきっかけで「すえむすこ」はお姫様に求婚。王様の試練を受けることになる。


王様の試練も、すえむすこは金のガチョウの価値を使わない。旅の途中で出会った人たち。大酒飲みや大食漢、小人のおじさんの協力でめでたく結婚できました。

 

小人のおじさんは「おれいに しあわせにしてやろう」とガチョウをプレゼント。りっぱに国を治め、お姫様と暮らす幸せな日々を手に入れるチャンスをくれたのですね。


お金(金のガチョウ)がなくても幸せになれる。金銭や道具、能力は目的ではなく手段。自分の力、自分の所有物にこだわることなく、人との良好な関係が幸運へと導いてくれる。


人の助けは文字通り「有り難い」こと。あるのが当然ではなく、してもらえたことに感謝。このお話は「大切なものは何か」を教えてくれるタメになる絵本ですね。


ちなみに、「すえむすこ」の二人の兄弟達も同じくお腹を減らした小人のおじさんと出会っているのですが、食べ物をわけてあげず、大怪我をしています。

 

もう一方の「金の卵を産むガチョウ」の話では、ガチョウを飼っている夫婦が、欲に目がくらんだばかりに手痛い経験をする。大切なはずのガチョウを殺してしまう。それに比較すると「すえむすこ」さん、素敵な伴侶と人から尊敬される地位を手に入れて幸せになっている。


同じ「ガチョウ」が題材になっているお話なのに、とても対照的な結末。文中には書かれていませんが、こちらの「金のガチョウ」は幸せに天寿をまっとうできましたよね、きっと。