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宮本武蔵の稽古方法…『武術談義』より

 

 

 

 

…あの宮本武蔵ですら、三人力とも五人力ともいわれながら“技”の稽古をする時は非常に軽い木刀を使用したそうです。


(中略)


力をつける訓練は容易く出来ます。力のない人が軽いものを扱うことも容易に出来ます。しかし、力のある人が力では通用しない世界を感得するということは本当に難しいと思います。

 

武術談義 

 

 

 

漫画『バガボンド24巻』の中に、宮本武蔵と佐々木小次郎が枝遊びする姿が描写されています。軽い小枝をまるで重い鉄の棒のように扱って、雪だるまを切断するというもの。


これは、軽いものを重く感じ、重いものを軽く感じる武術の身体感覚のようですね。感覚的には、シーソーや天秤のように、重心位置によって重さと体重を調和させるイメージ。たとえ同じ重さのおもりでも、釣り合いの支点を変えれば、一方が重く、一方が軽くなって傾きが生まれる感じ。


武術の“技”とは、握っている武器(刀や棒などの得物)の重さに振り回されることなく自由に扱える状態。重いものでも軽いものでも。体重をうまく使って持ち上げる。なので、腕力に頼らず、筋肉の力で刀をぶんぶん振り回さない静かな動きになるようですね。


柔道や合気道などの投げ技も同様で、相手の体重を軽く扱うように自らの姿勢を変化させるのが秘訣。そうえいば、「達人は、手のひらにのせた羽の重さを感じてバランス(姿勢)を微妙に変える」という話を聞いたことがあります。あるかないかの微妙な重さを感じる…わずかな重みとバランスすることで、繊細な身体感覚が養われ、力を使わずに投げられるようになるのかもしれないですね。


二本の刀を用いて戦う二刀流(ニ天一流)で有名な宮本武蔵さん。力が強いから二刀を扱っていたのではなく、二刀を扱うことで無駄な力を使わないようにしていた?


片方だけに剣を握っているとバランスが悪いですよね。ヤジロベーのように、両方に重みを抱えていると、重さが重さを支えてくれる。二刀流のポイントは、左右両方の刀の重みでバランスするように動くことでしょうか。


つまり、「軽い木刀で稽古を行っていた」というのは、刀を持つことから腕力を解放することが目的なのだと考えられる。大切なのは、腕の筋肉をバネ秤天秤のバネのように使って、伸縮で重みを感じること。軽い方が刀の重みを意識しやすくなるのだと思われる。重すぎると、伸びきったゴムのように縮む力が弱くなって、重さを感じにくくなってしまう?

 

 

 

武術談義 

作者: 黒田鉄山 (著), 甲野善紀 (著) 

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