とくに印象的だったくだり…
人間は客としてこの世にやって来たと思えば、苦労はないものだ。
満足できる食事が出されたら、それを「ごちそうさま」といただけばよいのだし、満足できないときであっても、自分は客であるのだから、これを褒めて食べねばならない。
夏の暑さも冬の寒さも、客であるのだからじっと耐えねばならない。
子どもや孫、兄弟たちも、自分と一緒にやって来た相客と思って仲良く暮らし、心を残さずにさらりと辞去せねばならない。
禅僧・沢庵和尚が記した『結縄集』からの引用の部分。「人生は過ぎ行く客たちの仮の宿」という言葉を聞いたことがありますが、人生は“仮の宿”というよりも“借りの宿”で、すべてを借りていると思えば、いろいろ上手く行くのかもしれないですね。
“自分のもの”だと思っているから失いたくない。
“自分の人生”だと思っているから思い通りにしたい。
死んだらすべて持っていけるわけではないですから、“自分はお客で、いろんなものをお借りしている”くらいの気持ちでいた方が執着しないで済む。
“もっと良いものがほしい”“もっと良くしたい”“失いたくない”という苦しみに縛られないで済むということでしょうか。
自分の家ではない…客だと思って、身の程をわきまえているからこそ不平不満に耐えられる。
自分の家族ではない…客の自分にこんなにもしてくれて有難う。家族だとお節介だと思えることでも他人だと有り難いと素直に思える。
同じ人間、同じ関係でも“客”という意識に変わるだけで謙虚な気持ちになって、振る舞いや態度が変わればうまくいく?
お借りしたもの、お預かりしたものだから“あるがまま(与えられた環境・条件・境遇)”に納得することができる。過剰な期待で失望したり、こんなはずではなかったと自分や他人を責めたりしてまうのは“自分のもの”だと執着しているからなのかもしれないですね。