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相手が動かなければ、自分も動かない太極拳の極意?…『太極拳』より

 

 

 

 


太極拳の極意のなかに「彼不動、我不動、彼欲動、我已動」という言葉がある。


これは相手が動かなければ、私も動かない。相手が動こうとすれば、私はそれを察知して先に行くという、敵(相手)を想定し、相手に勝つための武道上の言葉だ。

 

 太極拳

 

 

 

「我已動」で使われている漢字は、「己」に似ていますがちょこっと違うようですね。「已」は“已に(既に)”や“已む(止む)”という意味で使われる言葉。形状的には「己」と「巳」の中間といった感じでしょうか。


昔、武術のお師匠様が「自分勝手に動いていては、投げ技や逆を極める関節技は掛らない」とよく話されていました。それは、相手の動き(したいこと)を察して、過不足なく一歩を踏むことが大事だといった内容。


力は、強ければ強いほど良いというものではない。動きは、速ければ速いほど良いというものではない。最大限(MAX)、能力を発揮すれば効果的で、望んだ結果を得られるというのは“幻想(身勝手な思い込み)”だとか。


「技を掛けたい(使いたい)」
「勝ちたい(負けたくない)」
「強くなりたい(強さを確認したい)」


大切なのは、そういった自分の“弱い心(自己顕示欲・虚栄心・劣等感など)”を制御すること。相手が欲するものを感じて、それを我欲(自己満足)で遮らないこと。相手を思うがままにコントロールしようとすると、途端に技が効かなくなるそうな(ちぐはぐで使えなくなる)。


でも、“弱い心”があるからこそ一生懸命に練習し、熱心に稽古に励むもの。ポイントは、アクセル(加速)ではなく、ブレーキ(減速)の踏み方にあるみたいですね。


彼が動くことを欲すれば、私も既に動いている。そして、強すぎず弱すぎず、速すぎず遅すぎず…相手に応じて必要な分を感じて、過不足無く動作を終了させる。つまり、いかに“已むか(止めるか)”が極意なのかもしれないですね。

 

 

 

太極拳

作者:楊 名時 (著)

asin:9784579202669